今月は泉鏡花祭り。
昨年の七月はW.シェイクスピアの「十二夜」で、今年は泉鏡花から四作品。
歌舞伎座らしからぬ出し物ですが、歌舞伎座だからこその空間が生かされていればアリだ
なぁと思う。そういう意味で、今年の鏡花祭りも素晴らしかった。
なんで、一等席を取らなかったのか、己を叱咤したいです。
【夜叉ヶ池】オモダカTEAMの結束力の高さというか、アンサンブルの良さがとても生きていた一幕。
正直なところを明かせば、春猿の百合・白雪姫はどうだろう?と観る前はあまり期待して
いなかった。しかし、緞帳が上がって白髪の百合が目に飛び込んで来た時の美しさ、発される
台詞の明瞭さとその調子、すごく良くてビックリ。そして、背後に居る百合を愛する優しい男・
萩原晃の段治郎。少し痩せたこともありますが、やはり美しく、一気に鏡花ワールドが舞台に
花開いて、三階席からの見物でも芝居にぐんぐん引き込まれました。
鐘の前に建つ寂しい家屋。その中に俗世間を離れ、静謐に生きる美しい二人が存在している
のですが、ほんとうに鏡花作品そのものが目の前にある感じで、冒頭から感動……感激?
そこへやって来る晃の友人・山沢学円の右近も嵌り役で良かった。
物寂しい舞台にそぐわない白いスーツ姿が、悪い意味ではなく俗っぽくて、百合と出会って
俗世を捨てた晃とは、今はもう住む世界が違うのだと分かりやすく観客に伝えてくれる。
この三人が軸となる芝居でしたが、ほんとうに良い組み合わせで素晴らしかったです。
春猿だけでなく、段治郎も右近も台詞がすごく聞き取りやすく、それでいて雰囲気もあるのが
とくに素晴らしい

あの独自の美学がある鏡花の台詞を違和感なく、聞きやすく話すって
いうのは難しいと思うのですが・・・。すごい。
お陰様で私の脳内では、舞台から発される台詞が縦書きの文字で流れ、鏡花の紡いだ言葉の
美しさにも、久しぶりに酔い痴れることができた。不思議な観劇体験だったなぁ。
脳内自動字幕スーパー(縦書き)と、視界から入ってくるリアル鏡花ワールド。
至福の時間でした。やっぱり、泉鏡花はいいなぁ。
〜生命のために恋は棄てない〜
百合と晃、白雪姫に共通する恋愛観。純愛物語ですよね。
そして、自然界(白雪姫たち物の怪)と、人間界との境界・・・。人間が約束を守るなら
物怪たちも人間たちの暮らしを脅かさないという誓約などから窺えるメッセージ性。
「夜叉ヶ池」は王道の恋愛物語+もののけ姫的な自然と人間との在り方をテーマに書かれて
いるのに、説教臭くないのがいい。「もののけ姫」見るなら、「夜叉ヶ池」。私は自分に
子供が出来たら「夜叉ヶ池」を見せたい。・・・すみません、脱線しました。
妖怪大好きっ子の私は、そういう視点でも鏡花作品が好きなので、つい妖怪好きには許し
がたい「もののけ姫」や「千と千尋〜」を引き合いに出してしまいました(笑)
私、鏡花世界に出てくる妖怪(もののけ)たちも大好きなんです。可愛らしくて♪
夜叉ヶ池にも蟹五郎とか鯉七とか鯰入とか物の怪が登場します。箸休めではないですが、
彼らのユーモラスな会話の場面は観ていて和みました。
「天守物語」にも物の怪はいっぱい出てきますので、月末の観劇が楽しみです。
ともあれ、「夜叉ヶ池」は予想以上に良くて、是非なんとかもう一度観たいと検討中。
長くなったので、「海神別荘」については、続きを読むに・・・。

↓↓↓
【海神別荘】綺麗〜〜。舞台美術と衣装がとても綺麗。
そして、海老蔵と玉三郎が夢のように綺麗。まるで夢を見ていたような時間でした。
「夜叉ヶ池」も良かったですが、こちらは問答無用。ただただ、綺麗、美しい。それだけで
良いお芝居でした。何も考えたくない。理屈とかいらない。
眼鏡を忘れた私は、双眼鏡越しに延々と舞台を見る羽目になったのですが、その視界に丸く
映し出される世界は夢幻そのもの。鏡花ワールド二幕目も、文句なしの素晴らしさでござい
ました。観に行って良かった!!
先日、「あわれ彼女は娼婦」の谷原王子が美しい、カッコイイ、日本でいちばんの王子様と
興奮気味に書いた私ですが、海老様を忘れておりましたね

谷原さんが「王子」なら、海老様は「皇子」って感じでしょうか?
ヤラレタ!!
今月は美しい男を見すぎて、ますます自分の恋は遠くへ行ってしまいそうです(笑)
海の公子の海老様は、ほんとうに美しく、かっこよかった

そして、玉三郎さん。鏡花の書いた「美女」そのもの。
戯曲でも「美女」という以外、役名の付けられていないお役ですが、この「美女」なんて
いう乱暴な役名に釣りあう人間は、そうそうこの世にはおりません。
私が美女だと思う柴咲コウさんや、中谷美紀さんなどの、ハイレベルな美しさの女性でも、
鏡花の「美女」は体現できないと思います。
〜この世のものとは思えない美女〜というのが、鏡花の書く「美女」ですので・・・。
〜この世のものとは思えない〜というのが重要で、男でも女でもない【女形】の玉三郎さん
というのは、その不思議さ、奇跡のような存在であることを含めて、この世のものとは
思えなさがあり、ピッタリです。
美男・美女で上演された「海神別荘」。それだけで十分で、何も申すことはありません。
「海神別荘」は原作(戯曲)も大好きです。
こちらも人間と、人外(海の公子たち)を比較して見ることで、人間特有の見栄や浅ましさ
などを気付かせてくれる。美女は宝石は人に見せてこそ価値があると言い、海の公子は宝石
は人に見せびらかせると艶は黒くなり、その質は醜くなると言う。はっとさせられます。
「人は自己、自分で満足をせねばならん。人に価値をつけさせて、それに従ふべきものじゃ
ない」・・・ためになる名言だなぁ。
他にもいろいろ考えさせられることを公子は言うので、神様のようです。海神別荘という
戯曲だから、神と捉えていいのかな?
ちなみに、いちばん好きな場面は、最後、公子に剣を突きつけられた美女が
「あゝ、貴方。私を斬る、私を殺す、その顔のお綺麗さ、気高さ、美しさ、目の(すゞ)しさ、
眉の勇ましさ。はじめて見ました。位の高さ、品のよさ。もう、故郷も何も忘れました。
早く殺して。あゝ、嬉しい。」と微笑むところです。大好きです。
なんだか、いつも以上に纏まらない感想になりましたが、最近は書き放題思ったことを書く
ことくらいしか出来ないのです。すみません・・・。
七月大歌舞伎・昼の部。堪能しました。(観劇日→7/17)

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